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　２　証拠資料の出典・引用について

□投稿者/ 安藤温敏 -(2011/06/11(Sat) 05:58:13)

さて、いきなり厳しいコメントになってしまうのですが、この試合のジャッジをするにあたって、まずはこの話が避けられません。証拠資料の出典・引用についてです。

今回、皆さんの証拠資料の原典をあたろうと思い、少し調べさせていただいたのですが、残念ながら皆さんのすべての資料に、なんらかの問題がありました。

■肯定側立論の資料

１番目の神野の資料のページ数記載がありません。幸い、もとの雑誌コピーが私の手元にあったのですが、引用された文章を探しだすのにかなり時間がかかりました。
２番目の資料は、URLを記載してください。これだと、知らない人は後から探し出すことができません。
３番目の資料もURLが記載されていません。また、丸田氏がこの文章を書いたのは、1996年ではないですか（少なくとも私が探し当てたのは、UFJ Institute REPORTの96年4号でした）？
４番目の諸井氏の文章は、残念ながら私は見つけることができませんでした。本当に同じ文章がWeb上にあるのでしょうか？
５番目の資料もきちんとURLを入れておいてください。これも、最初書籍なのかと思ってしまい、実はPDFで配布されている資料だと気づくのにかなり時間がかかりました。

■否定側立論の資料

①～③の資料については、タイトル等は正確に書かれていて良いのですが、やっぱりURLを入れてもらわないと、探しだすのにかなりの手間がかかりました。
④の資料は、ページ数を入れるべきです。私はスクールヨミダスで調べましたが、新聞の縮刷版を当たる人は、これでは探すのに苦労するはずです。
⑤は報告書のタイトルとURLを入れてください。
⑥は、この文章を探すことができませんでした。そもそもこれはWeb上から取った資料ですか？それとも書籍や雑誌の資料でしょうか。書籍や雑誌資料なら、書籍・雑誌名、号数、ページまで入れてもらわないと存在が疑われます。
⑦については、私もこの書籍を所有しています。が、ページ数が書いてなかったために、該当する記述を探すことができませんでした（二回ほどざっと通して読みましたが、残念ながら正確に同じ文章を見つけることができませんでした）。
⑧もページ数を入れてください。④と同様です。

■否定側第一反駁の資料

資料としてだされているのは、５点目の議論の「地域主権戦略大綱」ですが、出典の記載が全くありません。
（ちょっとだけ調べてみましたが、今のところ、今後「関係法律の整備を行う」とされていて、法律の整備がきちんと行われているのかどうかは確認できませんでした。）

■肯定側第一反駁の資料

１点目の「レファレンス」の資料のURL記載がありません。
２点目の道州制推進連盟の資料もURL記載がありません。
３点目の「地域再生戦略と道州制」については、そもそもWeb資料なのか、書籍なのか、区別が不明で、普通の人には調査不能です（私は同書籍（林良嗣＋２１世紀政策研究所監修『地域再生戦略と道州制』日本評論社）を持っているので調べられましたが）。また、書籍なら、ページ数が必要です（私が調べた限りだと、21ページの記述だと思われます）。

■否定側第二反駁の資料

URL記載があるのは良いのですが、該当URLに飛ぶと、「地方交付税法等の一部を改正する法律案の概要」となっていて、タイトルが異なります。また、引用された文章が存在しませんでした（別途調査して、一応「地域雇用創出推進費」なるものの存在は確認できました）。

この他、いちいち指摘はしませんが、引用の内容についても、文意改変には至らないまでも、細かな語尾や表現が、原文と異なる箇所が幾つかありました。

今回のオンラインディベートにおいては、出典のきちんとした記載が義務付けられています。ルールを確認して下さい。もっとも、ルールに記載されていなかったとしても、この程度の出典記載と正確な引用は、最低限のマナーです。

資料の出典は、資料が本当に存在することを保証し、第三者が資料を検証するためにつけるものです。調査に時間がかかったり、そもそも調べられないような出典の記載は悪意のある隠蔽と取られても仕方ない、という事を理解してください。また、「文意が変わらないから」といった安易な気持ちで適当に文章を変えて打ち込んでしまうと、思わぬ誤解を招く可能性があります。絶対にやめてください（ただし、中略などは、きちんと明示してあれば、その中略が妥当かどうかについて、議論の対象になるので、「ルール」とはまたちょっと違うニュアンスになります）。

細かいことをくどくど書いて、嫌なジャッジだ、と思われるかも知れませんが、ディベートは、客観的な資料に基づいて議論を行うわけですし、せっかく一生懸命調査して探しだしたエビデンスに、このようなところでケチをつけられるのは、とても損だと思います。また、今回は致命的な引用ミスはありませんでしたが、あまりにもひどい資料の改変や出典の隠蔽が発覚すれば、実際の試合でも敗戦となる可能性だってあります。

実際の試合においても、もし相手の資料の不備を見つけたら、遠慮無く指摘すべきです。これは別に咎められるようなことではなく、ディベート甲子園ルールでも認められています（出典の不備については明記がありませんが、細則C-8の「著しくマナーに反する行為」に該当すると思います）。こんなことで勝ち負けが決まるのは不本意かも知れませんが、そもそも不備な資料を使った方が悪いのです。また、こうした指摘をされなければ、いつまでたっても、資料の引用に対する意識が向上しないでしょう。

資料に対する態度に関しては、ディベーターの皆さんだけでなく、顧問の先生（がもしいれば）にも責任があります。こうした問題を放置するのは、指導力以前の問題だと思います。この試合の関係者に限らず、もし指導者の方がこの文章を読んでいるのであれば、是非一度、選手のもっている資料をきちんと見直してあげてください。

次回から、実際の試合内容のコメントに移ります。

*(2011/06/11(Sat) 12:09:13 編集[投稿者])

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