□投稿者/ 田中時光 -(2010/05/22(Sat) 01:11:59)
 | 次に否定側のデメリット「患者の生きる権利が奪われる」を見ていきます。
安楽死の法制化によって家族への配慮やあるいは家族などからの圧力によって患者が本心とは裏腹に安楽死を義務としてとらえ死を強制されてしまう危険性が高まるという内容でした。そして深刻性では安楽死を義務ととらえるようになると生命の価値についての社会のとらえ方が変化して命を相対化する悪い方向へ向かってしまうという事が論じられていたと思います。
この点について肯定側からは現状に尊厳死という選択肢があるので現状よりどのくらい圧力などを理由に死を選ぶ人が増えるかわからない、また本当に生きたいと思う人は圧力では死を選ばないという議論が出されていました。
デメリットの評価としては発生については減じられているものの残っているという解釈をしています。尊厳死などに加えて新たに安楽死が法制化されることで圧力がより増す、あるいはそれを理由にして死を選ぶ方向に向かう事はありうると思ったからです。ただし、こちらも深刻性とやや議論が乖離していることや、具体的にどのような問題が起こるのかが非常に見えづらいため、深刻性はあまり大きく評価はしていません。
以上のように、メリット・デメリット共に立論段階からの証明不足や反駁によってかなり削られたという状態になっています。この状態でどちらに投票するべきかについて比較が充分になされていればそれに従うのですが、今回の試合では否定側がトライはしていましたがその基準を取るべき理由が薄く、肯定側からも反論があったためこの基準は採用する事が出来ませんでした。こうなるとあとは審判の解釈にゆだねられることになってしまいます。この辺も踏まえた上で比較するものさしを予め重要性・深刻性にもりこむことが重要であると考えられます。
今回の試合はより安楽死の法制化によって影響を受けるのはどちらなのかという点から、議論を評価することにしました。この基準に照らして考えると、デメリットはある程度法制化固有の分がある（患者へのアナウンスになる）ことを証明している一方でメリットはどの位の人が要件に当てはまるのか、尊厳死と安楽死の違い、またそもそも尊厳を安楽死によって守るべきなのかといった説明が不十分であるため、現状維持と法制化の違いが示しきれていないという風に考えました。したがって今回は否定側に投票します。
ある意味で今回の試合は最後の最後までどちらに投票するべきか非常に悩むものでした。改善すべきところは改善し、いまあるもので充分にいいものは更に磨いていただいて夏に向けて頑張ってください。質問等はいつでも受け付けますので遠慮なく書き込んでください。
以上で講評判定を終了します。ありがとうございました。
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判定（否定側及び結論）
/ 田中時光 (10/05/22(Sat) 01:11) [#15] ←Now
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