親記事 / 返信無し
□投稿者/ 田中時光 -(2010/05/22(Sat) 00:45:32)
 | では、次に判定に移ります。
肯定側のメリットは「患者の尊厳ある死が可能になる」でした。
現状の問題として不治の病により激しい身体的苦痛に寿命を迎えるまで苛まれる人がいることをALSの例を挙げながら説明し、現状では改善の余地が少ないと主張していました。また、ALS以外の不治の病に苦しむ人々の中には人の手を借りなければ生きていく事が出来ない人もおり、そういった人たちは尊厳を侵害されているという説明がなされていました。
現状の問題を解決するために安楽死を法制化することで患者が望めば苦痛を止め、尊厳を守るために安楽死を選択する事ができて、意思を尊重する事ができるという形でこのメリットは説明されていたと思います。
この点に対して否定側からは現状の問題に対して、ALSによる苦痛は緩和する事が出来るし、死にたいほど苦しむ患者は少ないのではないかという反論がなされていました。また尊厳を守るという点に関してはそれは生きているときと同じような暮らしが出来ないことを認めないプライドの問題ではないかというユニークな議論も展開されていました。
これらの反論を踏まえた上で、メリットは以下のように評価をしています。すなわち、現状の問題として不治の病から来る肉体的苦痛というのは少なからず存在し、プランによって解決はある程度可能であるというところまでは理解できました。否定側の反論もこれで完全に苦痛が除去できるというところまではやはりいえないのではないかというふうに考えています。
ただし、ここでメリットを評価するうえで問題になった議論が3つ出てきます。
1つ目は現状分析3で出されていたほかの病でも尊厳が守られていないという議論です。これ自体は悪い議論ではないのですが、今回の安楽死の要件では肉体的苦痛のみが安楽死の対象になるということで、尊厳が守られていない人がすぐに安楽死の対象になるのかがあまり説明されておらず、この部分については解決性が小さいという評価をしています。
2つ目は講評でも触れた重要性の議論です。立論の段階から何故尊厳を守る事が重要で、かつ国が法律によって保護しなければならないのかという説明が不十分であるという風に私は感じました。ですので重要性はあまり大きくは評価していません。
最後は肯定側第一反駁で出されていた尊厳死の議論です。肯定側によると現状にも尊厳死という選択肢が存在し、圧力などは現状でも起きていると主張していました。これ自体は非常にいい議論だとは思いましたが、この議論を出すことで肯定側は自分達の首を絞めてしまったと私は感じました。つまり、現状にも死ぬ選択肢があるのだとしたら、本当に苦痛に苛まれている患者は安楽死の法制化に関わらず現状で死の選択をしているのではないかと考えられるからです。
以上の点から、メリットは現状で苦痛に苛まれている人にとって安楽死は選択肢になるが、現状との差およびその重要性についてはかなり減じられていると評価しています。
|
|
判定（肯定側について）
/田中時光 (10/05/22(Sat) 00:45) [#14]